
グローバル化が進む現代、国際結婚や海外移住、あるいは海外赴任中に亡くなられるなど、相続手続きが国境を越えるケースが増えています。
そこで日本の相続人や実務家が直面するのが、「日本のような便利な『戸籍』が存在しない」という壁です。
アメリカには、家族関係を証明できる戸籍制度がありません。その代わりに、「死亡証明書(Death Certificate)」や「結婚証明書(Marriage Certificate)」などを個別に集める必要があり、日本の手続きに慣れていると「何から手をつければいいの!?」と途方に暮れてしまうことも少なくありません。
今回は、アメリカで相続手続き上の公的書類が必要になった場合を想定し、具体的な取得手順や注意点について、事例を交えながらわかりやすく解説していきます。
- ❓なぜ海外の証明書が必要になるの?日本の戸籍制度と海外事情
- 🇺🇸アメリカの証明書取得方法:どこで、どうやって?
- 💻【一番手軽!】オンライン申請「VitalChek」で証明書を取得する方法
- 📄「アポスティーユ」は必要?
このページのポイント
- 日本の戸籍制度は海外の出来事(死亡・結婚・離婚)が届出されない限り反映されない。
- アメリカでは州ごとに「出生・死亡・婚姻・離婚証明書」が発行され、戸籍のような一元管理制度はない。
- 外国での死亡・離婚などが日本に届出されていないと、相続時に「戸籍と事実が食い違う」トラブルが発生する。
- VitalChekは日本からでも利用でき、死亡・結婚・離婚証明書をオンラインで申請可能。
- 州により取得できる人(請求資格)が異なる。
- 提出先によってはアポスティーユ(国際的な公文書認証)が必要になることがある。
❓なぜ海外の証明書が必要になるの?日本の戸籍制度と海外事情
日本の戸籍制度は、日本人の出生から死亡まで、婚姻、離婚、養子縁組など、その人の身分関係を網羅的に記録する非常に便利なシステムです。しかし、この戸籍も、海外での出来事がきちんと日本の役所に届出されていないと、「事実と異なる記録」になってしまうことがあります。
戸籍と事実が食い違う「困った!」ケース
具体的にどのようなトラブルが起きるのでしょうか。
ここでは、実務でよく遭遇する「困った!」事例を2つご紹介します。
ケース1:アメリカ で亡くなった親族が、戸籍上まだ生きている!?
日本人Aさんがアメリカへ渡り、現地で結婚し、生活の拠点を移して亡くなりました。
現地での葬儀や手続きは滞りなく済ませたため、ご遺族はすべて解決したと思っていました。
しかし数年後、日本にいるAさんのご兄弟が亡くなり、その相続手続きのために戸籍を集めたところ、なんと「Aさんがまだ生存している」状態になっていたのです。
これは、アメリカで亡くなった事実が、日本の役所(領事館や本籍地)に届け出られていなかったために起こる現象です。
戸籍上、Aさんは相続人の一人として扱われてしまうため、このままでは遺産分割協議が進みません。
慌てて日本の役所に相談すると、「アメリカの公的証明書(死亡証明書)を取り寄せ、日本語訳を添えて死亡届を出してください」と指示されることになりました。
遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)
相続人全員で遺産の分け方を話し合い、具体的な分配内容を決定する手続きです。遺言がない場合や、遺言で分け方が定められていない財産について行われます。

ケース2:アメリカ人と離婚したのに、戸籍上はまだ結婚している!?
日本人Bさんは、過去にアメリカ人と現地の方式で結婚し、そのアメリカの結婚証明書を添付して日本の役所にも婚姻届を提出しました。これにより、Bさんの戸籍には婚姻の事実が正しく記録されました。
ところがその後、Bさんはアメリカの方式で正式に離婚したにもかかわらず、その離婚の事実を日本の役所へ届け出るのを忘れてしまっていました。結果、日本の戸籍上は「婚姻が継続している」状態のままとなってしまったのです。
やがて Bさんが亡くなり、相続手続きのために戸籍を確認したところ、問題が発覚しました。
戸籍上は外国人配偶者がまだ存在しているため、書面上は「外国人元配偶者が、相続人の一人」であるかのように見えてしまったのです。実際には離婚しているため、彼には相続権がありません。
このケースでも、アメリカの「離婚証明書」を取得し、日本の役所に提出して戸籍に記録することで、元配偶者が相続人ではないことを証明する必要がありました。

日本で当たり前の戸籍制度。外国ではめずらしい!
これらのケースに共通するのは、日本の戸籍制度はあくまで「日本国内の出来事」を中心に機能しているため、海外で発生した身分関係の変動(出生、死亡、婚姻、離婚など)が、日本の役所に届出されない限り、戸籍に反映されないという点です。
また、多くの外国には、日本のような「戸籍制度」は存在しません。その代わりに、アメリカの場合は各州が発行する「出生証明書(Birth Certificate)」「死亡証明書(Death Certificate)」「結婚証明書(Marriage Certificate)」「離婚証明書(Divorce Certificate)」といった個別の証明書が存在します。これらをその都度取得して日本の手続きに利用することになります。
🇺🇸アメリカの証明書取得方法:どこで、どうやって?
では、実際にアメリカの証明書を取得するにはどうすれば良いのでしょうか。
主な方法としては、以下のようなルートが考えられます。
1.事実が発生した州の政府機関に直接請求する方法(郵送が主)
2.裁判所を通して請求する方法
3.オンライン代行サービス「VitalChek(バイタルチェック)」を利用する方法
日本から請求する場合、1や2の直接請求では「ドル建て小切手やマネーオーダーの用意」の壁があり、事実上ほとんどの方は請求できません。
そのため、クレジットカード払いや国際宅配便(UPS等)に対応している、3の「VitalChek」を利用するしかありません。
今回は、この「VitalChek」を使った取得方法を詳しくご紹介します!
※ご注意(請求できる人について)
アメリカにおける公的証明書(Vital Records:出生、婚姻、離婚、死亡証明書)の取得資格は、州法(State Law)によって定められているため、州ごとにルールが大きく異なります。各州の規定を調べたうえでお試しください。

💻【一番手軽!】オンライン申請「VitalChek」で証明書を取得する方法
VitalChekは、出生・死亡・結婚・離婚証明書をオンラインで申請できる公式提携サービスです。アメリカは州によって制度が異なるため、それぞれの州の規定に基づいて申請することになります。日本からでも手軽に申請できるため、最初に検討するべき方法と言えるでしょう。
VitalChekでの申請方法の概要
州によって細かい画面遷移は異なりますが、基本的な操作手順は以下の通りです。
- サイトへアクセス
- 証明書の選択
- 情報の入力
- 利用目的・関係性の選択
- 配送先と決済
- 本人確認書類の提出(※重要)
- 完了・発送
VitalChek公式サイト(VitalChek.com)にアクセスします。
「どこの州の」「何の証明書(死亡・結婚など)」が必要かを選択してスタートします。
画面の指示に従い、対象者の氏名、発生日(死亡日や結婚日)、発生場所(市や郡まで)を入力します。
※情報が曖昧だと記録が見つからない(No Record Found)原因になります。可能な限り正確に入力しましょう。
「Estate(遺産相続)」「Personal Record(個人の記録)」などの利用目的と、請求者と対象者との関係(本人、子、配偶者など)を選びます。
証明書の送付先(日本の住所)を入力し、クレジットカード等で手数料・送料を支払います。
最後に、請求者の本人確認書類(パスポートの画像データなど)のアップロードを求められる場合があります。指示に従って提出してください。
審査と発行処理が完了すると、発送通知メールが届きます。(※州や配送方法、混雑状況により、到着まで数日から数週間かかります)
日本からの請求は、国際宅配便(UPSなど)で送られてきます!
VitalChekで申請した場合、証明書の日本への配送は、UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)などの国際宅配便で送られてきます。これは追跡サービスも充実しており、速達性も高いため、確実に手元に届く安心感があります。ポスト投函ではなく、対面で受け取る必要があります。

📄「アポスティーユ」は必要?
日本での相続手続きでアメリカの公的証明書を提出する場合、提出先によっては「アポスティーユ(Apostille)」という認証を求められることがあります。
アポスティーユとは?
アポスティーユとは、「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)」に基づく付箋による証明のことです。この認証があることで、「この公的証明書は、その国(アメリカ)の正式な公文書ですよ」ということが国際的に認められ、日本の役所や金融機関でスムーズ受け付けてもらいやすくなります。
念のためアポスティーユを付けておくのがおすすめです!
日本の市区町村役場への戸籍に関する届出の場合、外国語の証明書に日本語訳を添付すれば、受理されることが多いと思います。この際にアポスティーユが必須とされるケースは多くありません。
しかし中には、証明書の真正性をより厳格に確認するため、アポスティーユの添付を求めるところが少なくありません。もしアポスティーユがないために後から追加提出を求められると、「二度手間」となり、手続きが大幅に遅れてしまいます。そのため、念のためアポスティーユ付きで取得しておくのが、最も確実でスムーズに手続きを進めるための賢い選択と言えるでしょう。
取得方法
通常、証明書の発行元(保健局など)と、アポスティーユの発行元(州務長官)は異なります。
VitalChekなどで証明書を取得した後、さらに別途、その州の「州務長官事務所(Secretary of State)」へ原本を郵送し、アポスティーユを申請する手続きが必要です。詳しくは、各州の「Apostille / Authentication」に関する案内を確認してください。


本人確認(Identity Verification)の壁
VitalChekでは、注文手続きの途中で「本人確認のクイズ(LexID)」が表示されることがあります。
これらはアメリカの信用情報(クレジットヒストリー)や公共記録に基づいて自動生成されるもので、例えば次のような質問が出されます。
たとえば、次のような質問です。
「2010年にあなたが住んでいた通りの名前は?」
「あなたが過去に所有していた車の車種は?」
「あなたの住宅ローンの月額はいくらですか?」
これらはアメリカ国内の個人データに基づいて作成された質問であるため、日本在住者が答えられるはずがありません。そのため、日本からの申請者は ほぼ確実にこの電子認証で失敗(Authentication Failed)します。
しかし、ここで失敗しても焦る必要はありません。 これが通常のルートです。
電子認証に失敗すると、自動的に「身分証のアップロード画面(またはFAX送付の指示)」に切り替わります。
ここからが本番です。日本人が提示できる有効な身分証は、実質的に**「有効期限内のパスポート」一択**となります。
手続きの際は、必ず手元にパスポート画像(スマホで撮影したものでOK)を準備してから始めましょう。
VitalChekのレシート※画像クリックで拡大

Webフォームでは、レシートに記載されている項目を入力して注文を進めます。
このページのポイント
- 日本の戸籍制度は海外の出来事(死亡・結婚・離婚)が届出されない限り反映されない。
- アメリカでは州ごとに「出生・死亡・婚姻・離婚証明書」が発行され、戸籍のような一元管理制度はない。
- 外国での死亡・離婚などが日本に届出されていないと、相続時に「戸籍と事実が食い違う」トラブルが発生する。
- VitalChekは日本からでも利用でき、死亡・結婚・離婚証明書をオンラインで申請可能。
- 州により取得できる人(請求資格)が異なる。
- 提出先によってはアポスティーユ(国際的な公文書認証)が必要になることがある。
新井 秀之
行政書士/認定経営革新等支援機関/東京出入国在留管理局申請取次者/神奈川県行政書士会横浜中央支部相談員/コスモス成年後見サポートセンター相談委員
- 対応エリア:
- 神奈川県横浜市
- アクセス:
- 相鉄線 天王町駅 北口より徒歩10分
- 対応業務:
- 相続/遺言/遺言執行/成年後見/終活
1965年に横浜市神奈川区で生まれ、東芝、リクルートでの企業勤務を経て、行政書士として独立いたしました。以来、「人生の最終章を支える」という使命を胸に、相続、遺言、成年後見、そして死後の諸手続きといった業務を中心に、数多くのご相談と向き合ってまいりました。...続きを読む
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な手続きや判断については、必ず専門家にご相談ください。法改正や自治体の運用により情報が異なる場合がありますのでご注意ください。


























州のスタンスによって、証明書の扱いが大きく2つに分かれます。
A. 厳格な州(Closed Record States)
プライバシー保護やなりすまし防止を重視する州です(例:ニューヨーク州など)。
ルール: 本人と直系親族しか取得できません。
必要書類: 申請者の写真付き身分証明書(パスポートや免許証)の提示に加え、時には親族関係を証明する書類を求められることもあります。
B. 公開されている州(Open Record States)
情報公開を重視する州です(例:フロリダ州の一部記録)。
ルール: 手数料を払えば、第三者でも取得できる場合があります。
ただし: 出生証明書に関しては、なりすまし犯罪防止のため、ほぼすべての州で厳格に管理されています。