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遺留分とは何か?―制度の趣旨と法的背景を踏まえて解説

2025.07.01

 
遺留分(いりゅうぶん)とは、被相続人の財産処分の自由に一定の制約を加え、配偶者や子などの一定の相続人に最低限の取得を保障する民法上の制度です。遺言や生前贈与によって取り分が極端に減少・ゼロとなる事態を防ぐ趣旨があります。この記事では、制度の趣旨と法的目的、遺留分を有する相続人の範囲と割合、侵害時の手続(遺留分侵害額請求の流れ・期限)を平易に解説します。読み終えると、ご自身の事案での権利の有無と適切な初動が分かります。

 

目次
  1. ⚖️遺留分制度の趣旨と法的目的
    1. 被相続人の「財産処分の自由」の制限
    2. 家族の生活と公平性の保護
  2. 👥遺留分を持つ相続人の範囲
  3. 💰遺留分の額
    1. 遺留分割合
    2. 個別の遺留分計算方法
  4. ⚖️遺留分を侵害された場合の救済制度(遺留分侵害額請求)
    1. 遺留分侵害額請求権の特徴
    2. 遺留分侵害額請求の具体例
  5. ⚠️遺留分が実務上問題となるケース
  6. 🛡️遺留分とその対策
このページのポイント

  1. 遺留分は、遺族の生活保障と、家族的扶養関係の継続を重視する視点から、被相続人の財産処分の自由に一定の制約を課す制度です。
  2. 兄弟姉妹には遺留分がありません。
  3. 遺留分の額は、各自の法定相続分の取得額に、遺留分割合を掛けた額になります。
  4. 遺留分割合は、直系尊属(親など)のみが相続人の場合は1/3、それ以外は1/2です。
  5. 遺留分を侵害された場合の救済制度として、遺留分侵害額請求権を行使可能です。
  6. 遺留分は完全に排除することが難しく、生前の「侵害の予防」の発想が大切です。

⚖️遺留分制度の趣旨と法的目的

遺留分制度の背景には、以下の2つの法的価値のバランスを図るという目的があります。

◎ 1. 被相続人の「財産処分の自由」の制限

民法では、被相続人は遺言によって自らの財産を自由に処分できるとされています(民法第902条)。しかし、この自由を無制限に認めてしまうと、たとえば家族をすべて排除して第三者に全財産を渡すといった極端なことも可能になってしまいます。そこで、遺留分制度により、一定の相続人(近親者)に対して、最低限の取り分を確保する仕組みを設けています。これは、遺族の生活保障の視点と、家族的扶養関係の継続を重視する制度的意義です。

◎ 2. 家族の生活と公平性の保護

被相続人の死亡は、相続人の生活に大きな影響を及ぼすため、遺留分制度は、特に被相続人に近い立場の家族の生活を保護する目的があります。また、親族間の極端な不公平や争いを抑止し、相続関係の安定と調和を促す効果もあります。

👥遺留分を持つ相続人の範囲

下表のとおり、遺留分は、配偶者・子・直系尊属(親等)に最低限保証される取り分です。兄弟姉妹には遺留分がありません。

相続人の種類遺留分の有無説明
配偶者〇常に遺留分を有する
直系卑属(子・孫)〇子が死亡していれば孫が代襲して権利を持つ
直系尊属(父母等)〇
(子がいない場合のみ)
子がいれば父母は相続人にならない
兄弟姉妹✕法律上、遺留分を有しない

このように、遺留分の保障は、家族関係の親密度と扶養義務の強さに基づいて制限されています。

💰遺留分の額

遺留分の額は、各自の法定相続分の取得額に、遺留分割合を掛けた額になります。但し、兄弟姉妹には遺留分はありません。(民法第1042条)

◎ 1. 遺留分割合

・直系尊属(親など)のみ相続人の場合:1/3
・上のケース以外の場合:1/2

この「1/2」や「1/3」は、全体として遺留分がどれだけ保障されるかを示しています。これを、各相続人の法定相続分に応じて個別に按分します。

◎ 2. 個別の遺留分計算方法

各自の遺留分は、次の式で求めます。(兄弟姉妹に遺留分はありません。)
「各自の法定相続分」 × 「遺留分割合」 = 「各自の遺留分」

例:相続人が親2人の場合

・各自の法定相続分は、父親1/2、母親1/2
・遺留分割合は、1/3
→ 「父親の法定相続分」1/2 ×「遺留分割合」 1/3 =「父親の遺留分」 1/6
→ 「母親の法定相続分」1/2 ×「遺留分割合」 1/3 =「母親の遺留分」 1/6

例:相続人が配偶者と子1人の場合

・各自の法定相続分は、配偶者1/2、子1/2
・遺留分割合は、1/2
→ 「配偶者の法定相続分」1/2 ×「遺留分割合」 1/2 =「配偶者の遺留分」 1/4
→ 「子の法定相続分」1/2 ×「遺留分割合」 1/2 =「子の遺留分」 1/4

相続人の構成と遺留分

相続人配偶者の遺留分子の遺留分直系尊属の遺留分
配偶者のみ1/2
配偶者+子1/41/4※
子のみ1/2※
配偶者+直系尊属1/31/6※
直系尊属のみ1/3※

※複数人の場合人数で等分

⚖️遺留分を侵害された場合の救済制度(遺留分侵害額請求)

被相続人が遺言・生前贈与等により遺留分を超えて財産を処分していた場合、遺留分を有する相続人は侵害額(不足分)の金銭支払いを求めることができます。2019年改正で旧「遺留分減殺請求(現物返還中心)」は廃止され、現行は金銭債権化した「遺留分侵害額請求」(民法1046条)に一本化されました。権利を行使するか否かは権利者の自由であり、被相続人の意思を尊重して請求しない選択も可能です。

生前贈与(せいぜんぞうよ)

被相続人が生きているうちに財産を無償で他人に与えることをいいます。主に相続税対策として利用されることを指し、贈与税の課税対象となる場合があります。

遺留分侵害額請求権の特徴

  • 金銭請求が原則:目的物の現物返還請求は不可(合意で現物充当は可)。
  • 請求相手と負担範囲:まず受遺者、なお不足する場合に受贈者へ。
  • 行使期間(消滅時効):侵害を知った時から1年、または相続開始から10年で消滅。
  • 支払方法の調整:裁判所が事情により支払期限の猶予・分割等を定めることがある。
  • 放棄の可否:相続開始前の放棄は家裁許可が必要/開始後は自由。

遺留分侵害額請求の具体例

例1:第三者への全遺贈

基礎財産1億円、相続人=配偶者・子1人。各自の法定相続分1/2×遺留分割合1/2→各自の遺留分1/4(2,500万円)。全財産を第三者Aへ遺贈している場合、配偶者・子は各2,500万円をAに請求できます。

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)

民法で定められた相続人ごとの遺産の取り分の割合です。遺言がない場合に適用され、配偶者や子、親、兄弟姉妹などの関係に応じて割合が決まります。

例2:長男への偏った生前贈与+遺言

基礎財産8,000万円(遺産5,000万+長男への生前贈与3,000万)、相続人=子2人。各自の法定相続分1/2×遺留分割合1/2→各自の遺留分2,000万円。次男は長男に2,000万円を請求できます。

⚠️遺留分が実務上問題となるケース

 
遺留分は「誰に・どれだけ移転されたか」「現金化できるか」で争点化します。

  • 自社株・事業承継:議決権確保のため株式を一人に集約し、他の相続人の遺留分を侵害。
  • 不動産偏在・現金不足:遺産が不動産中心で金銭給付の原資が乏しく、支払方法が課題。
  • 生前贈与の偏在:住宅取得資金などの算入範囲(相続人:原則10年、第三者:原則1年)が争点。
  • 再婚・複雑な家族構成:先妻子・後妻・養子が混在し、算定が複雑化。

🛡️遺留分とその対策

遺留分は完全に排除することが難しく、「侵害の予防」と「紛争コストの最小化」を組み合わせて設計する発想が大切です。

1. 生前の遺留分放棄(家庭裁判所の許可)

相続開始前に推定相続人が遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。自由意思・合理的必要性・不当な不利益がないこと等が審査のポイントになります。

2. 生命保険・信託の活用

生命保険
指定受取人に保険金という「現金原資」を準備でき、代償金の財源確保に有用です。保険金は原則として受取人固有の財産となるため、相続財産から切り離した資金を渡せます。

信託(民事信託等)
形式上、信託財産は委託者の相続財産から外れるため、承継のコントロールが可能になります。もっとも、遺留分を完全に免れるものではなく、受益権の設定が贈与・遺贈に準ずると評価され、侵害額請求の対象となり得ます。

3. 相続人との事前合意・調整(家族会議)

目的は「情報の見える化」と「納得の創出」です。財産目録や想い(付言)を共有し、将来の齟齬を減らします。生前に交わす「相続はしません」という念書は法的には無効ですが、実務上の合意形成としては意味があります。

被相続人が生前にした相続分の合意は法的には無効です。

被相続人と相続人との間で生前に交わされた相続分の合意は、たとえ書面に残していても法的には無効です。相続権は、被相続人が亡くなった瞬間に発生する権利だからです。
だからこそ、生前の話し合いで得られた理解は、法的な無効を承知の上で文章に落とし込み、最終的には公正証書遺言等で整合性を保つことが、周囲に迷惑をかけない最善の対応となります。

4. その他の実務的手当て

  • 遺言の工夫:付言事項や遺言執行者指定で運用を円滑化します。
  • 財産の組替え:評価・分割が難しい共有不動産の偏在を是正します。
  • 生前贈与の管理:記録(契約書・振込履歴等)を整備し、評価の争いを防ぎます。
このページのポイント

  1. 遺留分は、遺族の生活保障と、家族的扶養関係の継続を重視する視点から、被相続人の財産処分の自由に一定の制約を課す制度です。
  2. 兄弟姉妹には遺留分がありません。
  3. 遺留分の額は、各自の法定相続分の取得額に、遺留分割合を掛けた額になります。
  4. 遺留分割合は、直系尊属(親など)のみが相続人の場合は1/3、それ以外は1/2です。
  5. 遺留分を侵害された場合の救済制度として、遺留分侵害額請求権を行使可能です。
  6. 遺留分は完全に排除することが難しく、生前の「侵害の予防」の発想が大切です。

新井 秀之

行政書士/認定経営革新等支援機関/東京出入国在留管理局申請取次者/神奈川県行政書士会横浜中央支部相談員/コスモス成年後見サポートセンター相談委員

行政書士新井秀之
対応エリア:
神奈川県横浜市
アクセス:
相鉄線 天王町駅 北口より徒歩10分
対応業務:
相続/遺言/遺言執行/成年後見/終活
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メッセージ
はじめまして。行政書士の新井秀之です。
1965年に横浜市神奈川区で生まれ、東芝、リクルートでの企業勤務を経て、行政書士として独立いたしました。以来、「人生の最終章を支える」という使命を胸に、相続、遺言、成年後見、そして死後の諸手続きといった業務を中心に、数多くのご相談と向き合ってまいりました。...続きを読む
免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な手続きや判断については、必ず専門家にご相談ください。法改正や自治体の運用により情報が異なる場合がありますのでご注意ください。
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