
ご家庭の事情や手続きの内容によっては、必要書類を集めることができず、対応に苦慮するケースが稀に存在します。そんな時、例外的な解決策として用いられるのが「届書記載事項証明書(とどけしょ きさいじこう しょうめいしょ)」です。これは原則非公開の書類であり、請求には特別な理由が必要とされますが、適切に活用すれば手続きの「行き止まり」を解消できる強力なツールとなります。
この記事では、「届書記載事項証明書」とは一体どのような書類なのか、その定義から請求できる条件、具体的な活用事例までを網羅的に解説します。ご自身の手続きで利用可能か、判断の指針としてお役立てください。
- 📄「届書記載事項証明書」って一体どんな書類?
- ❗どんな時に役立つの?具体的な「困った!」ケースをご紹介
- 📅届書記載事項証明書の取り扱いは、届出の時期によって大きくルールが変わります
- 📑窓口へ行く前にチェック!請求に必要な書類
- 届書記載事項証明書とは「市区町村に提出された届書の内容」の証明書です
- 届書は原則非公開. 例外として取得できるのは「利害関係人」で、「特別の事由(正当な理由)」が必要です
- 届出の時期で請求先が変わる
- 平成27年1月1日〜令和6年2月29日までの届書 → 市区町村5年保存、その後法務局で一定期間保存
- 令和6年3月1日以降の届書 → 市区町村が保存、法務局は保存・発行に関与しない
- 請求には根拠書類が必要、本人確認書類、利害関係を示す戸籍、特別な事由を証明する書類が求められます
📄「届書記載事項証明書」って一体どんな書類?
まず、「届書記載事項証明書」という名称は聞き慣れない方が多いと思います。これは、私たちが市区町村役場に提出した「届書(死亡届・出生届・婚姻届など)の原本」の写し(コピー)に、認証文をつけて証明したものです。
たとえば、死亡届の記載事項証明書であれば、役所に保存されている「手書きの死亡届(死亡診断書含む)」のコピーに、「記載事項は、届書の通りであることを証明する」といった認証文に役所の証明印が押されて発行されます。
たとえば、死亡届の記載事項証明書であれば、役所に保管されている「手書きの死亡届(死亡診断書含む)」のコピーの余白に、役所が「記載事項は、届書の通りであることを証明する」といった証明印を押して発行します。
戸籍との違い
普段よく使う「戸籍謄本」との最大の違いは、記録されている情報量です。
- 戸籍・除籍謄本
届書の内容をもとに、必要なデータ(氏名や日付など)だけをコンピュータ等に記録したもの。 - 届書記載事項証明書
データ化される前の「届出用紙そのもの」の写しに役所の認証を付したもの。
(戸籍には載らない「死因」や「医師の氏名」なども確認できる)
原則非公開! 取得には「厳しい条件」がある
届書には、個人の極めてプライベートな情報が含まれています。
そのため、プライバシー保護の観点から原則非公開とされており、以下の2つの条件を両方満たさない限り、取得することはできません(戸籍法第48条第2項)。
- 請求者が「利害関係人」であること
- 取得するのに「特別な事由(正当な理由)」があること
利害関係人とは
誰でも請求できるわけではなく、一定の親族、または届出人に限られます。
※単なる債権者などの「財産上の利害関係人」は含まれません。
- 届出事件の本人(例:出生届なら「子」、婚姻届なら「夫婦」)
- 届出人(窓口に提出した人ではなく、用紙に署名押印した人)
- 届出事件本人の親族(その他の親族)
特別の事由(正当な理由)とは
「利害関係人なら誰でも取れる」というわけではありません。
法律上、戸籍ではなくあえて届書の記載事項証明書を取得しなければならない「特別な事由」が必要です。
特別の事由とは、①戸籍に記載されていない届出事項②届書類及びその添付書類の閲覧又は証明を得なければ判明しない事項③これを利用しなければ、利害関係人として意図する権利行使ができない場合、をいいます。
例として、以下の場合が挙げられます。
認められる主なケースは以下の通りです。
-
遺族年金の請求
遺族年金(国民年金・厚生年金・共済年金)を請求するにあたり、法令の規定により添付が必要となる場合。 -
簡易生命保険(郵便局)の保険金請求
契約日が平成19年9月30日以前で、かつ保険金額が100万円を超える(※)ものの請求。
※複数の保険を合わせて100万円を超える場合でも可。
※簡易生命保険では、死因によって保険金が変わる等の理由で、死亡診断書(届書)の内容証明が必須とされています。 -
裁判所への証拠提出
身分行為(婚姻、離婚、養子縁組、養子離縁など)の無効確認訴訟を行うため、裁判所へ証拠として提出する必要がある場合。
これらに該当し、その使用目的が適正であると認められた場合に限り、交付を受けることができます。

❗どんな時に役立つの?具体的な「困った!」ケースをご紹介
「困った!」ケースの一例をご紹介します。
ケース1:何十年も前の死亡保険金請求で死亡診断書がない!
「え、こんな昔の保険があったの!?」と、何十年も前に亡くなったご家族の生命保険契約が見つかることがあります。いざ保険金を請求しようとすると、保険会社から「死亡診断書」の提出を求められることがあります。
しかし、何十年も前の死亡診断書が手元に残っているケースは非常に稀ですよね。病院に再発行をお願いしようにも、カルテの保存期間が過ぎていて再発行が難しいことも少なくありません。
そんな時に役立つのが、この「届書記載事項証明書」です。死亡届には医師による死亡診断書が添付されており、その内容も記載されます。死亡届の記載事項証明書は、死亡診断書の内容を証明するものですので、これを取得して、死亡診断書の代わりとして保険会社に提出できる場合があります。

ケース2:内縁関係のパートナーの遺族年金を請求したいのに書類が足りない!
法律上の夫婦ではなく、事実婚(内縁関係)のパートナーが亡くなった場合でも、一定の要件を満たせば「遺族年金」を請求することができます。
しかし、ここで立ちはだかるのが書類の壁です。
遺族年金の請求には、死亡診断書のコピー(または死亡の記載がある戸籍謄本)が必要になります。しかし、通常これらの書類は、亡くなった方の「戸籍上の親族」が管理していることがほとんどです。
内縁のパートナーは戸籍上は他人となるため、亡くなった方の親族と関係が良好でなかったりする場合、書類の提供をお願いしても協力が得られないケースが少なくありません。
こうした場合に有効なのが、届書記載事項証明書です。
内縁の配偶者であっても、この証明書を独自に取得することで、親族の手を借りることなく死亡の事実や内容を公的に証明し、年金の手続きを進めることが可能になります。

📅届書記載事項証明書の取り扱いは、届出の時期によって大きくルールが変わります
令和6年3月1日に戸籍法が改正され、届書の保管ルールが大きく変わりました。ご自身が必要とする証明書が「いつ提出された届出か」によって、請求先が全く異なります。
① 平成27年1月1日〜令和6年2月29日に届出された届書の場合
法改正「前」の古いルールの期間に提出されたものです。提出からの経過年数によって場所が移動します。
● 保存先
まず、届出を受理した市区町村役場で「約1年間」保管されます。
その後、本籍地を管轄する「法務局(またはその支局)」へ移送され、そこで長期間(原則27年または50年)保存されます。
● 請求先
本籍地の市区町村を管轄する法務局(又はその支局)です。
② 令和6年3月1日以降に届出された届書の場合
法改正「後」の新しいルールの期間です。この期間の届書は、法務局には送られません。
● 保存
届出した市区町村が、紙の原本は翌年度から5年間保存し、スキャンした電子データの届書は10年間保存する。
● 請求先
届書の種類によって異なります。
① 届書原本(紙の届書)→ 届出をした市区町村役場のみ
② 届書の情報内容証明書(電子データの届書の証明)→ 届出をした市区町村役場または本籍地の市区町村役場
❌ 法務局では一切取り扱いません。
📑窓口へ行く前にチェック!請求に必要な書類
この証明書はプライバシー性が高いため、通常の戸籍請求よりも必要書類が厳しくチェックされます。
ケースによって異なりますが、基本的には以下の「3点セット」が必要です。事前に請求先(法務局または役所)へ電話確認をしておくと安心です。
請求者の本人確認書類
運転免許証、マイナンバーカードなど、官公庁発行の顔写真付きの身分証明書を用意しましょう。
利害関係人であることの確認書類
請求する人と、届書に記載されている人(亡くなった方など)との親族関係が分かる戸籍謄本が必要です。(届出の種類によって変わります。)
特別の事由があることの確認書類
遺族年金請求の案内通知、簡易生命保険証書など、証明書でなければならないのかを客観的に示す書類が必要です。(請求する理由を具体的に示すもの)
💡まとめ:困ったときの“最後の切り札”
「届書記載事項証明書」は、普段あまり耳にしない書類ですが、特定の状況では非常に強力な味方になってくれます。
しかし、取得できる人が限られていたり、請求理由を明確に伝える必要があったり、さらに法改正によって請求先や期間が複雑になったりと、ご自身で手続きを進めるには少々ハードルが高いと感じるかもしれません。少し特殊な事情で困ったときの手続きなので、専門家にされることをお勧めします。

- 届書記載事項証明書とは「市区町村に提出された届書の内容」の証明書です
- 届書は原則非公開。例外として取得できるのは「利害関係人」で、「特別の事由(正当な理由)」が必要です
- 届出の時期で請求先が変わる
- 平成27年1月1日〜令和6年2月29日までの届書 → 市区町村5年保存、その後法務局で一定期間保存
- 令和6年3月1日以降の届書 → 市区町村が保存、法務局は保存・発行に関与しない
- 請求には根拠書類が必要、本人確認書類、利害関係を示す戸籍、特別な事由を証明する書類が求められます
新井 秀之
行政書士/認定経営革新等支援機関/東京出入国在留管理局申請取次者/神奈川県行政書士会横浜中央支部相談員/コスモス成年後見サポートセンター相談委員
- 対応エリア:
- 神奈川県横浜市
- アクセス:
- 相鉄線 天王町駅 北口より徒歩10分
- 対応業務:
- 相続/遺言/遺言執行/成年後見/終活
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な手続きや判断については、必ず専門家にご相談ください。法改正や自治体の運用により情報が異なる場合がありますのでご注意ください。
























1965年に横浜市神奈川区で生まれ、東芝、リクルートでの企業勤務を経て、行政書士として独立いたしました。以来、「人生の最終章を支える」という使命を胸に、相続、遺言、成年後見、そして死後の諸手続きといった業務を中心に、数多くのご相談と向き合ってまいりました。...続きを読む